不動産投資で必要なコスト

 

不動産投資で必要なコスト

不動産投資には不動産事業を経営するという側面があり、経営をしていく上で必ず諸経費が発生します。

不動産投資は、特有の経費として、物件購入費以外に物件取得時に必要な経費、保有している間かかる経費、売却時にかかってくる経費等コストが別途必要になります。

 

これらのコストを計算に入れておかないと、表面利回りで思い描いた収入と実際の収入とにギャップに、後悔が生まれる可能性があります。

実際の収入となる実質利回りを計算する上で重要な不動産投資におけるコストについて説明していきます。

不動産投資には利回りが二つ存在する

不動産投資の指標とされる利回りには、大別して2つの利回りが存在し、不動産価格に対する年間の収入割合を単純に計算した「表面利回り」と、不動産購入時と不動産保有時にかかってくるコストを勘案した「実質利回り」があります。

※不動産購入時のコスト:建物に対する消費税、不動産仲介手数料など

※不動産保有時のコスト:固定資産税、都市計画税など

 

不動産投資をネットで検索するとAI等により、不動産投資用物件の広告が表示されますが、その時には「表面利回り」しか掲載されていません。クリックして物件の詳細を見ると満室時の家賃収入など記載はあります。

たとえば、不動産価格が3,000万円、「表面利回り」7%と掲載されている物件では

それから、不動産購入時のコストが150万円、不動産保有時のコストが年間60万円かかると想定した場合、「実質利回り」を計算すると、

というように、表面利回りと実質利回りとではコストを勘案する分、実質利回りの方が低くなります。それでは不動産投資におけるコストにはどのようなものがあるでしょうか。

不動産購入時にはコストは五つ

不動産を購入する場合、不動産の物件本体価格のほかに多くのコストが発生します。

  • 建物に対する消費税
  • 不動産仲介手数料
  • 契約書に貼付する印紙税
  • 登記する際の登録免許税、司法書士手数料
  • 不動産取得税

 

以上の5つのコストを含めた投資総額を想定したうえで、対象物件の利回りを検証しましょう。

注意:物件によって入居者を募集する前に修繕を行う必要があればその修繕コストも必要となります。

不動産保有時のコスト

実質利回りを計算する際に勘案する不動産保有時に毎年経常的にどのようなコストがかかってくるかというと、

  • 固定資産税・都市計画税
  • 建物管理の委託費用
  • 建物小修繕費用
  • 賃貸管理の委託費用
  • 共用部分の水道光熱費
  • 火災保険(長期一括払いの保険もあります)

 

などがあり、入居者が入れ替わるごとに、リフォームの費用や状況によっては設備の交換費用などが発生します。

また、収益用不動産では、10年単位で建物の大規模修繕工事が必要となり、大規模修繕工事のコストで、修繕とみなされる工事については、その年度の工事費用として見られますが、資産価値向上にかかわる内容の工事代は資本的支出とみなされ、その年度のコストとして認められないことにちゅういしてください。(毎年の減価償却として費用は計上できます)

不動産は所有しているだけでも税金はかかります

不動産保有時のコストにもあがっている固定資産税・都市計画税は、利用している、してない、収益発生している、していないにかかわらず、保有しているすべての不動産に毎年発生します。

固定資産税の課税標準は、原則、固定資産税評価額ですが、ほとんどの土地が負担調整措置として一定額減額されています。

都市計画税は都市計画で定められた市街化区域内にある土地・家屋に対して課税されます。

※記載している税率は標準税率ですが、不動産の所在する市町村で異なる場合があります。

固定資産税・都市計画税は、一定の要件を満たした居住用の家屋や居住用の家屋が建っていつ土地は減額されるというメリットはあります。

不動産を機能させるにはキチンと管理

不動産投資は運用中、主に2つの管理が必要になります。

  • 建物管理:主に建物を維持するために必要となる管理
  • 賃貸管理:主に賃料の集金、滞納した場合の督促、入退去の手続きなど

建物管理

エントランスや廊下、階段、ごみ置き場など共用部分の清掃やエレベーターの保守点検、防犯設備の維持管理、それらに伴う水道光熱費など建物の大きさに関係なく建物の維持管理には費用がかかり、その管理コストは家主が負担しなければなりません。

優良な入居者を確保するためには、ある程度のコストをかけてでも良質な管理は必要不可欠なことですし、どれくらいのレベルで管理するか、どこまでを専門業者に委託するかによってコストは変わります。

賃貸管理

賃料の集金を個人で行うにも別の部分で負担が大きくなります。そのため、賃料の集金代行を不動産管理会社に委託すれば、その分のコストが発生します。

 

仕事をしながら管理を行うことは個人では難しいこともあり、委託することとなりますが、実質的な利回りにも影響する部分なので、管理コストについては委託する業者との交渉も必要になります。

忘れてはならないコスト

個人が不動産から得る家賃など不動産所得には税金か課せられます。不動産所得の計算は、

不動産所得=総収入金額―必要経費となります。

※必要経費:固定資産税・都市計画税、管理費、入居者募集費用、減価償却費、借入金の金利など

 

不動産所得は超過累進課税といって、不動産所得が多いほど高い税率が適応され、しかも総合課税の対象となっているので、他に給与所得などがあった場合には合算して最終的な税率により税金が算出されます。

所得税と住民税は合わせると15%~最高50%の税率となるので、所得が高くなれば税負担も多くなってきます。

 

不動産投資には保有運用中にも様々なコストが発生します。不動産投資で重要なことはキャッシュフローです。いくら表面利回りが良くても現金が残らなければ意味がありません。購入時・運用中のコストを十分に把握したうえで、キャッシュフローはどれくらいになりそうか、どれくらいの実質利回りになりそうかを十分イメージして取り組んでください。

 

参考:売却時にかかる仲介手数料などのコストはこちら

 

 

 

 

REITの持つリスクは?

REITの持つリスクは?

REITも預金や債券のように元本が保証されているわけではありません。株式市場全体や不動産市況の影響を受けるため、個別の業績に変動がなくても株式と同様に市場の反応で価格が下落する場合もあります。また、投資法人によっても投資口価格の変動要因は異なり、各決算時の分配の権利確定、投資口の追加発行、資産の取得及び売却、決算発表、スポンサーの交代、合併等によっても価格が変動する傾向があり、様々なリスクがあります。どんなリスクがあるか見てみましょう

1.価格変動リスク

REITは証券市場に上場しているため、投資口価格が毎日変動しています。買った時より価格が下がれば損失が発生します。これが価格変動リスクです。価格を変動させる要因には次のようなものがあります。

  • 不動産価格 … 不動産市場や地価の状況によってREITが保有している評価額が変われば、REITの価格にも影響します。
  • 需給関係 … REITは証券取引所で取引されているため、買いたい人が売りたい人より多ければ価格は上がり、買いたい人が売りたい人より少ないと価格は下がります。
  • 分配金 … REITの分配金の原資である賃料は、不動産市場の動向や経済環境など様々な外部要因の影響を受けています。REITの分配金が増えれば、そのREITの魅力が高まり価格が上がります。分配金が減ってしまうとその逆になります。

資産運用会社が予想する分配金額は、一定の条件における予想であり、将来の受取額を保証するものではありません。

2.金利変動リスク

REITは投資家から集めて資金のほかに、金融機関から借りた資金(借入金)も使って不動産を取得します。この借入金(有利子負債)が多くなると、金利が上昇したときに利子の負担が増加し重くなるため、収益の減少要因となり、分配金が減ることがあります。また市中金利上昇により、他の金融商品の利回りが上がれば、相対的にREITの分配金利回りの魅力が薄れてしまい、REITの価格が下落する可能性があります。

3.流動性リスク

REITは証券取引所で取引されていて、売り手と買い手の両方がいることによって売買が成立します。売り手・買い手のどちらかが少ない(あるいはいない)という状況になったり、双方の提示する価格に折り合いがつかなかったりして売買が成立せず、買いたくても買えない、売りたくても売れないということが起こる可能性があります。

4.収益変動リスク

REITの投資家は決算期毎に分配金を受け取る権利がありますが、分配金は確定されたものではありません。地震など自然災害による建物の毀損、賃料減額・未納、テナントの退去、物件の売却損など、資産運用会社の能力経済情勢によっても収益が増減するため、分配金が減少する可能性があります。また増資を行うことにより利益が増加しても1口当たり分配金が減少する場合もあります。

5.信用リスク

不動産投資法人の資産運用会社には、不動産会社や商社、金融機関などがスポンサーとして出資しており、スポンサーからの不動産物件購入や、情報やノウハウを提供してもらうなどさまざまなバックアップを受けています。そのため、スポンサーの経営状況が悪化したり信用力が下がったりするとREIT自体の信用力が下がってしまいREITの価格が下落する可能性があります。

6.運用体制に関するリスク

REITの運用を行う資産運用会社には、スポンサーからの人員提供や不動産の開発、管理等、設立後もスポンサーがREITの運営に深く関わっているため、スポンサーとの利益相反が生まれやすい仕組みといえます。利益相反によるリスクを回避する意向を示すため、投資法人では外部者を含めコンプライアンス部門の設置や徹底した情報開示を行っています。

7.投資法人の倒産及び上場廃止リスク

REITも一般の企業と同様に倒産リスクがあります。金融機関の融資環境の変化や投資法人の収益低下に伴うキャッシュフロー悪化から、資金調達が出来ず倒産に陥るリスクがあります。ただし、破綻した場合でも、不動産の価値はゼロにはなりません。理論上は精算時に不動産を売却すれば、投資資金が戻る可能性があります。また証券取引所の上場廃止基準に該当した場合、上場廃止となるリスクがあります。

8.投信法及び不動産に関わる法、税制度等の変更に関するリスク

REITに関わる様々な法制度の変更により規制が新たに掛かる場合、資産及び投資元本の価値が変動する可能性があります。

 

以上で、多少重複している点も含めREITが持つリスクについてご紹介しました。REITを購入するときも、どのようなリスクがあり、どのような時に生じるのかを知っておく必要がありますので、その際の参考にでもしていただけたらと思います。

また、REITは銘柄ごとに組み入れている不動産の種類や数が違うので、それぞれのREITの特徴を調べて、納得したうえで購入することが重要になります。

区分所有マンション投資

マンション投資(区分所有)

区分所有のマンション投資

区分所有のマンション投資とは、一棟のマンション内の、一部屋や数部屋を購入し、家賃収入を得ることを目的とする投資方法です。

不動産投資を始める方が、最初に購入する商品として区分所有マンション、特にワンルームマンションを購入する方が圧倒的に多く、アパートのような一棟物より購入価格が低いため、試しにという気持ちで初心者にも手が出しやすい種類のものと言われています。メリット・デメリットなど様々な角度から解説したいと思います。

 

区分所有マンションのメリット・デメリット

一棟買いとは違い、マンションの一区画を購入するため多額の投資資金を必要としない分、リスクか低いのではと思われがちです。不動産投資での基本的なメリット・デメリットと重複しますが、どんなメリット・デメリットがあるか見てみましょう。

《区分所有マンションのメリット》

  • 少額の自己資金で比較的気軽に投資が可能
  • 自己資金や借入金額も少額から始められる
  • ワンルームマンションの場合、入居率が高く、回転も速い
  • 毎年の確定申告にて、損益通算し所得税の還付を受けられる(限度有り)

 

以上のように初期投資の額を抑えることができる点がメリットとして挙げられます。では反対にデメリットの方はどうでしょうか。

《区分所有マンションのデメリット》

  • 管理費の他に修繕積立金などの費用が毎月かかる
  • 入居者の取り合いで、同じ1棟内で他の部屋の所有者がライバルとなってしまう。
  • 一人の所有者が、安い家賃で募集すると全体が安いほうへ影響を受けやすい
  • 退去すると次の入居者が決まるまで収入がゼロ
  • 赤字が発生しても毎年損益通算できるが、「赤字回復は困難」と覚悟が必要
  • 毎年赤字の場合、仕事を辞めると支払ができなくなる
  • 区分の権利のため、基本的に古くなる程価格が下がる傾向がある
  • 売却時のタイミングでは損切りを覚悟しなければいけない
  • 区分所有の借り入れが重すぎて他の融資が承認されない

 

と、思いつくままに列挙してみましたが、メリット・デメリットを見た限りでは、正直「あまりお勧めできる方法でない」ことは否めません。

しかし、「まずは区分を買って練習し、不動産投資がどういうものかわかったら、あとは少しずつスケールを大きくしていけばいい」と考えれば、捉え方も変わってくるので、その方向で今、人気といわれているワンルームマンション投資を解説していこうと思います。

初めての不動産投資として考えるのであれば、新築?中古?

「投資用ワンルームマンションを買いませんか」という営業電話がありますが、いくら新築と言っても、手は出さない方が無難なことが多いです。(別途、ご説明しますが…)

基本的にワンルームマンション投資はお勧めしたくないのですが、投資用ワンルームマンションを購入するなら新築物件と中古物件ではどちらが良さそうなのか見ていきましょう。

新築ワンルームマンションVS中古ワンルームマンション

ワンルームマンション投資をするなら中古のほうが収益を得られる可能性は高くなります。新築、中古の特徴をそれぞれご紹介します。

新築ワンルームマンション

投資用の新築ワンルームマンションではメリットよりデメリットの比重が重いことが目立ちます。

新築ワンルームマンションのメリット

  • 新築であっても1棟のマンションやアパートに比べると購入金額が低く、会社員でも融資を受けやすく、購入が難しいような地域のいい立地に自分の不動産が持てる優越感を感じられる。
  • 新築のメリットとして募集時に少し高めの家賃設定ができる。

 

新築ワンルームマンションのデメリット

  • 想定されている家賃収入は新築時入居の高め家賃で計算されていることが多く、最初の家賃設定での入居者が退去してしまうと中古となり家賃が下がるため利回りも下がる
  • 投資用ワンルームマンションでは多額のマージンを含んでいるため購入価格が高いので、それに伴って利回りが低くなってしまいます。
  • 新築のため修繕費の発生は押さえられますが、退去の度にクリーニングが必要となり、想定外の出費が必要になります。

 

中古ワンルームマンション

次に、中古ワンルームマンションのメリット・デメリットをみてみましょう。

中古ワンルームマンションのメリット

  • 新築ワンルームマンションと同じように、いい立地に自分の不動産が持てます。
  • 新築物件と比べると中古物件は売手と買手の間で価格が決まる、市場価格のため、購入価格が安く、いい物件が見つかる可能性があります。

 

中古ワンルームマンションのデメリット

  • 経年劣化によって不動産の価値が下がり家賃も下がってしまいます。
  • 修繕により高額な出費が発生する可能性があります。
  • 耐用年数の残りが少ないため、購入金額以上で売却できる可能性は低くなります。
  • 利回り次第では売却してもトータルマイナスになる可能性があります。

 

中古ワンルームマンションに軍配

新築・中古のワンルームマンションのメリット・デメリットを見てみましたがどうでしょうか?

どちらもお勧めしがたいですが、強いて言えば、物件によって利回りの高い物件が見つかる可能性を考えて、中古ワンルームマンションの方がよいといえます。

分譲タイプのマンションは約15年~20年に1回、大規模修繕があります。しっかりと修理、修繕が行われているかが重要で、中古物件には、重要事項調査報告書という、マンションの診断書のようなものがあります。

積立金はどれぐらい貯まっているのか、どういう工事をしてきたのか、今後の計画案と積立金の値上げ予定はどうなのかなどが分かります。建物管理の良し悪しでその後の寿命は決まりますし、得られる収入にも差が出てくるので、重要事項調査報告書で状態を確認できることは大きなアドバンテージになります

この手の中古ワンルームマンションならば、サラリーマンでも頑張れば、ほぼ現金で買える価格(数百万円)から始めることができるといえます。

希望は空室期間の短さと入居率の高さ

なぜワンルームなのか。メリットの部分でもあげましたが、入居率が高く、回転も速いという点です。

ワンルームは意思決定者が1人で済むので、自分がいいと思えばその時点で入居が決めることができるため、入居決定に時間がかかりません。

加えて、回転の速さも見逃せない部分で、入居者に対して契約時の礼金を手にすることも可能ですから、入居者の属性上、入居から退去するまでの期間が短く、回転が速い分、礼金を手にするまで間隔が短くなります。

これらのスピードがファミリータイプとワンルームでは全然違います。さらに、所有してからのコストもファミリータイプと比べてワンルームは安く済み、リフォーム期間も短くなります。次の入居者にすぐ入ってもらって、日割りの賃料を発生させることも可能で、入居者に対するコストを最小限に抑えることが可能になります。

将来性が高く、賃貸需要が見込まれるかが重要

不動産投資というのは、家賃収入で考えることが大切です。今から投資する場所に将来性があるのか、高い賃貸需要が見込めるのかどうか、これが重要です。

不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは

初心者でも少額の資金で参加できる不動産投資として不動産小口化商品が注目されています。

特にインターネットの普及に伴う手軽さで、多くの人の関心を集める不動産小口化商品について、関連性の高いクラウドファンディングや不動産特定共同事業(法)にも触れながら解説します。

不動産小口化商品とは

不動産投資を行うには、本来持たれているイメージ通り数千万円から数億円単位の多額の資金が必要になるのが一般的で、不動産会社や金融機関だけでなく入居者への対応など、手間のかかる手続きが伴うものでした。

近年は、投資単位が1口あたり100万円、場合によっては10万円という手頃な資金で、共同所有者もしくは匿名組合員として参加できるようになってきています。

こうした不動産の小口化の背景には、いわゆるクラウドファンディングによる投資方法の一つとして注目を集めたことにあります。この方法では資金を投資するだけで、不動産の運営も営業者に一任することができ、その点においては手軽に不動産投資ができる仕組みと考えられたからです。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」という単語を組み合わせた造語です。製品開発やサービスの立ち上げなどの目的を実現するために、インターネットを介して不特定多数の人や組織に対して、出資をはじめとする協力を依頼することをいいます。ソーシャルレンディングとも呼ばれ、幅広い分野での資金集めの方法として活用されています。

クラウドファンディングの種類には「投資型クラウドファンディング」という、金銭的な見返りを伴う方法や、「購入型クラウドファンディング」という、サービスを受ける権利や商品を購入することで支援する形態をとる方法、「寄付型クラウドファンディング」といって、見返りを期待しない応援型の方法などに分けられ、少額の資金で参加できるのが大きな特徴になります。不動産の小口化の場合は、利益および最初に決めた利息に基づき配当が行われるため、「投資型クラウドファンディング」に当てはまります。

不動産特定共同事業法の内容

不動産特定共同事業法とは、1995年4月に施行された法律です。以前、一律の規制がない状態で、多くの不動産事業者が不動産特定共同事業を実行し、平成バブル崩壊による資産価値の急落によって、投資家に甚大な被害が発生しました。このことを受けて、不動産の小口化商品の売買において投資家を保護し、小口化投資商品市場を健全に発展させる目的で作られたものです。

小口と言っても、かつての不動産小口化商品は1億円を超える商品が多かったのですが、この法律が制定されたことで、不動産小口化投資の最低出資額が撤廃され、1口100万円前後から投資できるようになりました。

近年は、クラウドファンディングの発展で、前述の通り、1口10万円前後から不動産小口化商品に投資することが可能になり、平成29年12月には小規模不動産特定共同事業も創設され、不動産の小口化商品は広がりを見せています。

不動産小口化商品の分類

不動産小口化商品は「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸借型」の3種類に大別できます。誰が主体となって不動産投資をするかによって異なるため、その主な特徴を解説します。

「匿名組合型」の主な特徴

投資家が出資したお金を事業者が集め、組合はそのお金で不動産を購入、管理、運営します。事業者は投資家と匿名契約を結び、出資分に応じて収益を分配金として支払います。

  • 投資家は組合に対して出資するため、不動産の所有権がない。登記上、不動産特定共同事業者が所有者として登記される。
  • 投資家の名前が登記簿に上がらず匿名となります。
  • 分配金は不動産所得でなく、雑所得となります。

「任意組合型」の主な特徴

投資家は出資分に応じて物件の共有持分権を保有し、その権利を持つ出資者の1人である事業者が組合を代表して不動産経営を行います。事業者は投資家と任意組合契約を結び、事業者から投資家に対して分配金を支払います。

  • 投資家と事業者間で任意組合契約を締結、投資家が出資して共同事業を運営
  • 投資家は共有持分を購入し、これを組合に現物で出資。
  • 不動産の所有権は投資家にある。登記もされるため、登記費用も必要。
  • 分配金は不動産所得になる。

「賃貸型」の主な特徴

投資家は出資分に応じて物件の共有持分権を保有し、その権利を物件管理する事業者に貸し出し、事業者は賃料を投資家に支払います。

  • 投資家が、不動産の共有持分権を事業者に委任、不動産賃貸事業から得た収益を投資家に分配。
  • 分配金は不動産所得になる。
  • 登記に所有者全員分の名義を記載する。
  • 万が一、事業者が倒産しても投資家には債権者としての権利が残る

不動産小口化商品の魅力

不動産の小口化商品は、少額で投資ができるという点が大きな魅力のひとつになります。さまざまな物件や異なる事業者の商品に同時に投資できるので、リスクを分散させるという点では大きな効果も狙える可能性もある商品と言えるでしょう。

今後の発展の余地がある不動産小口化商品

不動産小口化商品について、クラウドファンディングや不動産特定共同事業法とともに解説してみました。他の不動産商品に比べて流動性に欠けるなどデメリットはありますが、小規模不動産特定共同事業の創設もあり、不動産投資全体から見れば、今後まだ発展する余地を残していると言えます。

特に少額から不動産投資が行えることは大きなメリットになり、インターネットでの情報収集、集客、決済が今後ますます広がっていくことが予想される現在、不動産小口化商品も、それに伴って大きく発展する可能性は高いと思われます。

REITとは

REITとは

REIT(リート)とは、Real Estate Investment Trustの略で、日本語にすると不動産投資信託となり、その名前のとおり、不動産に投資する投資信託です。

投資家から資金を集めて、不動産を運用して得た賃料収入等を元に投資家に分配する金融商品になり、投資家は間接的に不動産に投資をしていることになります。

米国で1960年代に誕生し、1990年代に急速に拡大、日本では、2000年11月「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正により、2001年9月に市場が創設されました。仕組みがアメリカのREITと異なる点もあるため、J-REIT(ジェイ・リート)と言われています。(以降、J-REITをREITと称します。)

REITの投資口は証券市場に上場しており、証券会社を通して日々の価格(投資口価格)で売買されています。投資信託と名前が付いていますが、上場株式と同様に取引する金融商品になります。投資家は株式会社の株主と同様に投資主総会に参加することができます。

株式との用語比較

REITの仕組み

REITの場合は、不動産投資法人という特別な法人を作ることで不動産への投資・運用等を行っています。

投資家から集めた資金や金融機関から借りたお金でオフィスビルなど複数の不動産を購入し、テナントに貸し出します。不動産投資法人はテナントから得られる賃料などから、管理手数料などを差し引いた金額を分配金として投資家に支払います。投資家はREITを通して間接的に不動産に投資する形になります。

不動産投資法人によって運用する不動産の種類(用途)が異なり、一つの用途に特化している投資法人や、複数の用途に分散する投資法人などがあります。

※上記は一般的な上場REITのイメージであり、実際のしくみ(運用)が必ずしも上記の通りになるとは限りません。

REITの運用の仕組み

不動産投資法人という投資法人は不動産を運用することだけを目的として創られた器のようなものです。法律によって直接運用などの実際の業務を行うことが禁止されており、運営を全て外部に委託しています。この委託先の中で重要な役割を果たすのが資産運用会社です。資産運用会社は、不動産の選定や日々の管理、資金調達等、実質的に不動産投資法人が必要とするほとんどの業務を行っています。

不動産投資法人の業務委託先

資産運用会社(投資信託会社)

購入する不動産の選定、金融機関からの資金借り入れ交渉、不動産の運営方針の決定を行い、不動産の価値を維持するために長期修繕計画などを立案し実行します。

さらに、テナント募集や不動産の管理・メンテナンスなどの業務は資産運用会社が専門業者を選定し、業務を委託します。

資産委託会社

REITが保有している資産の保管を行います。通常、信託銀行が資産保管会社となっています。

専門業者

資産運用会社の指示のもと、テナント募集や不動産の管理・メンテナンスなどの業務を行います。

 

※上記は一般的な上場REITのイメージであり、実際のしくみ(運用)が必ずしも上記の通りになるとは限りません。

不動産投資法人は原則として不動産の開発は行わず賃貸事業に特化している点から、一般の不動産会社に比べて収益が安定しています。

REITの魅力

REITには不動産投資信託という名前から金融商品としての魅力と、不動産投資としての魅力という2つの魅力が想像できます。では、それぞれの魅力を見てみましょう。

金融商品としての魅力

高く安定した分配金(インカムゲイン)

REITは年2回あるいは1回決算を行い、投資家に分配金を支払います。通常の株式会社であれば利益に対して法人税がかかりますが、REITは制度上、利益の90%超を分配すればなど一定の基準を満たせば、法人税が課税されない仕組みがあります。そのため、投資家は不動産に直接投資するのと同様に、不動産からの収益のほとんどを決算期ごとに分配金として受け取ることができ、株式と比べて高い分配金を得ることができます。

また、長期に安定した賃料を生む不動産を投資対象としているため、分配金が安定しており、インカムゲインとしての特徴を持つ金融商品です。

少額で不動産投資

不動産に直接投資するには、少なくとも数千万円以上の多額の資金が必要になるため、個人で不動産投資を検討しても、資金面がネックになります。これに対してREITは不動産を証券化しているため、1万円から100万円程度の少額で投資できます。

分散投資

個人が現物の不動産投資で分散投資を行うとしても投資金額が多額になるため困難です。また不動産を1棟だけ購入しても、空室が発生した場合、収益を生まないだけでなく管理費等の経費が掛かるため、収益はマイナスとなります。

一方、REITは複数の不動産に投資しており、現物不動産への投資と比較してテナント数も多いので、空室による賃貸収益全体が大きく減ることがないなど、格段にリスクが分散されています。また投資法人によっては、投資対象資産の用途や地域が多岐にわたります。したがって、REITは、少額での投資でも用途・テナント・地域の分散も可能になります。

換金性が高い

現物の不動産は売りたいときにすぐ売却できるとは言えません。また、売却する際、不動産仲介会社を選び、売却金額を自分で判断し、様々な書類を揃えるといった手間の掛かる作業が必要となります。

一方、REITは証券市場に上場しているため、投資口を市場価格で取引できるので、現物不動産の売却のような手間をかけずに換金できます。

しかも、REITの価格は毎日変動しているため、タイミングによって、購入時の価格より高く売ることができれば、その差額が利益となります。

プロの運用、透明性が高い

現物の不動産投資には、購入した物件のテナントや建物管理など素人には煩わしい面倒な業務がたくさんあり、管理やメンテナンスを専門業者に任せるにしても、業者がちゃんと管理しているかどうかは自分自身でチェックしなければなりません。さらにテナントが退去するなど空室が増えれば賃料は減り、不動産の維持が難しくなります。

一方、REITは不動産の売買や運営を不動産投資の経験豊富なプロが行っています。運用以外の業務(物件の管理やメンテナンスなど)を行う業者の選択や監督も行うので投資家が不動産に直接投資するような費用や手間がかかりません。

また、運用不動産の稼働状況や収支状況を定期的に開示しているので、投資家は投資法人が運用する不動産の状況を知ることができます。

不動産投資としての魅力

インフレ対策になる

不動産投資はインフレ対策になるともいわれています。インフレというのは「継続的に物価が上昇すること」です。物価が上がると手持ちの現金や預貯金の勝ちは目減りしてしまいます。

一方、インフレになると不動産の資産価値や不動産賃料も上がる傾向にあります。それに伴ってREITの価値や分配金も上昇すると考えられています。

このようにREITを運用すれば、不動産に直接投資するよりも少ない金額で不動産に投資できるだけでなく、インフレへの備えが可能となる金融商品と言えます。ただし、銘柄によって投資対象とする用途や物件売却方針が異なるため、賃料の上昇及び下落の度合いは異なります。

また、一般的に不動産の価格は株価などに比べると変動が小さく、比較的安定していることから、REITは「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品といわれています。

REITは、魅力がある一方でさまざまなリスクがあり、元本・利回りが保証された商品ではありません。上場時や増資時に発行される目論見書、決算毎に開示される報告書等には、その他リスクが詳細にわたって記載されています。投資する際にはそれらをよく読み、リスクを確認することが重要です。

【関連情報】REITの持つリスクは?

不動産投資の方法を分類

不動産投資の方法を分類

不動産投資は他の投資と比べ、多額の資金が必要と感じると思います。特に住宅を購入したことがある人なら、不動産の購入にかかる金額を予想してしまうため敷居が高いイメージを持たれるかも知れません。投資先によっては、少ない資金でも十分始めることができます。

それぞれの投資先にリンクを設定していますので、詳しく紹介したページへ飛べます。参考にしていただければと思います。

 REIT(J-REIT・不動産投資信託)

Real-Estate Investment Trust」の略で、REITはリートと読み、「不動産投資信託」「証券化不動産投資」とも呼ばれます。

不動産投資は基本的に不動産そのものを購入しますが、REITの場合は投資信託の一種で、直接不動産を購入するものではありません。J-REITなどの不動産投資信託を通じて不動産会社の銘柄を購入し、その企業の運用実績によって、分配金を得たり、銘柄の価格上昇が狙えたりします。

購入価格は銘柄により差はありますが、現物の不動産を購入するより小額から行えるので、初心者にとって始めやすい投資の一つと言えます。

不動産小口化商品

不動産特定共同事業法に基づき、ビルなど金額の大きい不動産を、複数の投資家から出資を募り、対象不動産の売買・賃貸事業を行い、その収益が分配される方法です。

実際に物件を買うので、投資家は出資した金額に応じて共有持分権を持つことになります。例えると、ビル一棟の中に複数あるオフィスルームのうち一室を所有しているようなイメージです。

ただ、この手の投資情報は一般の人では入手しにくい背景があります。

マンション投資(区分所有)

本格的な不動産投資を始めるのであれば、ワンルームマンション購入の区分所有が初心者に取っての第一歩といえます。マンションやアパートの一室を購入し、賃貸経営を行うということです。

中古ワンルームマンションであれば300万円程度から購入できる物件もあり、初心者に限らず人気の高い投資先となっています。新築・中古、単身用・ファミリー用、都心・郊外の違いなど収益条件等の見極めが重要です。

戸建て住宅の賃貸経営

購入対象物件をマンションやアパートではなく、一戸建てを購入して賃貸経営を行う方法です。

マイホームとして一戸建を購入することを思い浮かべる方が多いかも知れませんが、場所によって需要があり、一度入居者が決まれば長期間借りてくれるという魅力があります。

 

駐車場経営

土地を購入してコインパーキングや月極駐車場などを運営します。

地主として既に土地を持っている人は始めやすいですが、駐車場に適した土地を探すのが年々難しくなってきています。

 

アパート経営・マンション投資(一棟)

アパートやマンションまるごと一棟を購入します。複数の部屋を一斉に貸しに出すことができ、賃貸収入も所有している部屋分得ることができる方法です。購入価格も高額になり、ほとんどの場合ローンが必要です。

ある程度安定した資力がある方でなければ、金融機関からの融資が下りにくく、ローンなしで始めるのは難しいかもしれません。満室による賃貸収益よりも空室率を考慮した資金繰りが重要です。

 

不動産投資の仕組と成功するための基本的な条件

不動産投資の仕組と成功するための基本的な条件

特に「資産運用に時間を割けない」という人には不動産投資はお勧めなのですが、大きな資金が必要となるため、「お金持ちのための投資」とか、「管理・運営が難しそう」といったイメージを持っている人も多いでしょう。

不動産投資の仕組みと基本的な知識とは何か見てみましょう。

不動産投資の仕組

不動産投資の仕組み自体は意外とシンプルです。物件を購入し、購入した物件を第三者に賃貸することで家賃収入を得る。そしてもう一つ、購入した物件の値上がり益で儲ける二つの方法があります。

それでは、不動産投資で利益を得る仕組みをみていきましょう。

不動産投資は資産家でなくてもできます!

不動産投資と聞くと「資産家による資産家のための投資」みたいな資金的な部分が一般的に不動産投資を始めにくくしているのは言うまでもありません。近年、不動産投資を行う多くの人は普通の会社員が多くなっていて、不動産投資の敷居はどんどん低くなっています。30代や40代の普通の会社員が大家になることが増えています。

その理由は不動産投資の最大のポイントである融資(ローン)で行っているということです。不動産投資において物件を一括で購入する人は会社員かどうかに関係なく、ほとんどいません。

不動産投資を行う多くの人は、銀行から融資という形でお金を借りて物件を購入しています。(これがいろいろな面でネックになって始めにくいのですが)

不動産投資で収益を得る仕組

不動産投資では、収益を得るための方法は二つありますが、まず、収益を得るための物件を購入するところから始まります。ほとんどの場合、物件の購入は、銀行など金融機関でローンを組み、お金を借りて購入しています。そして購入した物件を第三者に賃貸することで、入居者から毎月の家賃収入を得ることができるようになります。

ただ、家賃収入のすべてが収入になるわけではありません。得られた家賃収入の中から金融機関へローンの返済、入居者の募集や物件の管理などを行ってもらう管理会社への支払い、物件の維持管理費、税金などを引かなければなりません。そして手元に残った分が儲けとなります。

これが一つめの利益を得る方法です。

家賃収入(インカムゲイン)

不動産投資の家賃収入はインカムゲインと言われます。インカムゲインとは株や不動産などの資産を保有していることで、発生する収益のことです。不動産投資では一度に入ってくる収入は投資総額を考えると大きくありませんが、賃貸している間は毎月決まった収入を継続的に得ることができます。

賃貸物件の家賃は株価や為替相場のように短期間で大きく変動することがほとんどありませんから、毎月の安定した家賃収入により、長期的な収益の見通しが立てやすいといえます。

これから不動産投資を考えている初心者の方には家賃収入を目的とした不動産投資がお勧めです。

売却益(キャピタルゲイン)

不動産投資で利益を得るもう一つの方法は不動産を売却することで売却益を得る方法です。これをキャピタルゲインといい、株や土地、建物など資産を売却することで得られる利益のことで、不動産投資では物件を購入価格より高く売却することでキャピタルゲインである売却益を得ることもでます。

タイミングによっては一度に大きな利益を得られる可能性がありますが、売却益を狙うには、物件の選別や市況を見極める高いスキルや知識が必要となってきます。売却益を目的とした不動産投資はあまりおすすめできません。

不動産投資で物件を購入するまでの流れ

不動産投資を始めるにはまず、物件を購入しなければ始まりません。ここでは物件の探し方や購入の流れなどを見てみましょう。

投資用の不動産物件を探す方法

インターネットで検索

投資用の不動産物件はインターネットでの検索から探すこともできます。気になった物件をサイトから問い合わせたり、会員登録をすることで不動産会社と繋がることができ、非公開物件を紹介してもらえたりする可能性があります。

不動産会社に行って探す

現在はインターネット上でも多くの物件情報を得ることができるので、不動産会社へ「行く必要なんてあるの?」と思われがちです。しかし、不動産会社に直接情報を取りに行くことによって、インターネットには掲載されていない物件を紹介してもらえたり、物件のある地域の詳細情報を教えてもらえたりする可能性があるため、不動産会社へ行って探すことでのメリットも大きいといえます。

 物件を購入するまでの流れ

物件を探し、購入したい物件が決まったら買い付け(購入申し込み)を入れます。不動産会社に買付証明書を提出し、物件を購入する意思を示したら、次は物件を購入するために必要な融資の審査を受けなければならないので銀行など金融機関に融資相談に行きます。融資は断られることもあるため、複数の銀行にあたってみましょう。

無事融資がとおったら、売買契約を結びます。後々にトラブルにならないよう、契約内容はしっかり確認して下さい。

ローン契約や管理会社との委託契約がまとまったら、最後は物件の代金支払いと引き渡しを行います。

 

不動産投資は「利回り」より「キャッシュフロー」が超重要!

不動産投資を始めようとする初心者に対して特に知ってもらいたいことは、不動産投資で利益を得るための大原則として「利回り」よりも実際の「キャッシュフロー」が超重要であるということです。

「利回り」と「キャッシュフロー」の仕組みを簡単に紹介しましょう。

「利回り」の仕組み

不動産投資をしたことがない人でも「利回り」という言葉について、なんとなく知っている人が多いと思いますが、簡単に言うと投資した金額に対してリターンがどれくらいあるかを表した数字が「利回り」といいます。

不動産投資の「利回り」は、基本的に「年間の想定家賃収入÷物件購入価格」で計算され、5%より10%など、パーセンテージが高いほうが「利回りがいい=利益がでる物件」ということになります。

実際に、不動産投資の利回りは「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類に分けられています。

「キャッシュフロー」の仕組み

不動産投資において「キャッシュフロー」とは、毎月の家賃収入からローンの返済や管理費など必要な費用を引いて、手元に残る現金のことを指しています。「利回り」にはローン返済額などが含まれていないため、実際に手元に残る利益がいくらなのかわかりません。

「利回り」はとてもいいのに、実際には赤字になってしまうということもありえることなのです。「キャッシュフロー」の計算を行うことは、物件から発生する正確な収益性を知るために非常に重要なことなのです。

キャッシュフローの計算方法は次のとおりです。

キャッシュフロー = 家賃収入-管理費・経費-ローン返済額

利回りよりもキャッシュフローが大切な理由

不動産投資において「利回り」は一つの目安になりますが、もっとも重視すべきなのは、「キャッシュフロー」です。

いくら利回りが良い物件を購入しても、賃貸事業の運営が始まってからでは物件購入時の「利回り」はほとんど意味がありません。利回り分だけの利益が入ってくると勘違いしてしまいがちですが、実際にはそこからローン返済や税金、広告費、修繕費など必要経費を支払わなければならないので、「利回り=手にできる利益」では決してないのです。

特に初心者では目先の利回りに惑わされてしまうことも多く、自分の手元に実際残る利益がいくらになるのか、しっかり把握することが不動産投資で成功するための絶対条件なのです。

「優良物件」とはどのような物件か

不動産投資では収益を得るために優良物件を購入することは重要です。「優良物件」とは、どのような物件をいうのでしょう。おさえておくべき必要なポイントが2つあります。

空室になりにくい物件

不動産投資で重要なのは、いかに空室を減らし満室運営ができるかです。

空室になりにくい物件というのは、立地条件の良い物件といえますが、立地がすべてというわけではありません。地域ごとの賃貸需要を見極めて物件を選定することが重要で、合わせて築年数にも注目しなければなりません。劣化した建物は賃貸需要が一気に低くなってしまうからです。物件や設備の劣化具合、大規模修繕がいつ行われたのかなどを確認して物件を購入しましょう。

キャッシュフローがでる物件

投資用不動産の広告などに書かれている「利回り」は気にしても、実際のキャッシュフローは気にしないという人がいますが、それは非常に大きな間違いです。利回りはあくまでも想定であり現実的な収益はキャッシュフローになるからです。

しっかりとキャッシュフローが出せる物件を選べば、毎月手元に残るキャッシュ(手残り金)をもとに、次の物件を買い進めることができるため投資の規模を広げていくことも可能になります。

不動産投資はほかの投資よりお勧めである理由

不動産投資は仕組みをしっかりと理解し、知識をつけることで成功するためにゼロから知識をつけていくのは大変かもしれません。しかし、不動産投資で儲かる仕組みというのは「物件を購入し、第三者に貸し出し、利益をだす」というとてもシンプルなものです。

さらに賃貸事業でもあるため、自分の判断でリフォームをする、入居者を集めるための広告をだすなど投資家自身の判断や努力で投資効率をあげることができ、購入した物件や土地は自分の資産として手元に残せるという魅力もあります。

そして、株やFXと違って景気などの影響で相場変動が激しいこともありませんから、投資の結果を外部要因に左右されにくいという点では不動産投資はお勧めです。

不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」

不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」

不動産投資も他の投資と同じように利益は常に不確実で不透明であり、様々なリスクが伴います。

「リスク」には「不確実性」のほかに「危険・危険性」という意味でも使われ、投資によって得られる利益を「リターン」と表現します。そのため「リスク」と「リターン」には、ある程度比例した関係性があるといわれています。その関係性をグラフで表してみました。

預貯金、株式投資、不動産投資におけるリスクとリターンの関係

預貯金から期待するリターンは金利ですが、リスクは銀行などの破綻によって資金が還らなくなることです。ただ、銀行が破綻しても元本1000万円までは保護されるためゼロになることはありません。したがって預貯金の金利は非常に低く設定されている「ローリスク・ローリターン」の商品となります。

株式投資は、投資した企業の業績などにより株価が下落したり、経営破綻によって株価がゼロになる危険性(リスク)があります。反対に業績が向上し、企業価値が上がることで株価が何倍にもなる可能性があり、配当と値上がりによる差益が期待するリターンとなる「ハイリスク・ハイリターン」の投資商品となります。。

不動産投資は、賃料の下落や空室などにより予定していた収入が見込めない場合や、不動産の価値が下落したり、災害により倒壊してしまうリスクがありますが、土地がある限り価値がゼロになる危険性は極めて低いといえます。このようなことから「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資商品といえます。

投資商品や投資対象によって様々なリスクとリターンの関係がありますが、そもそも資産を増やすことが目的で投資を行うわけですから、計画性や資金力などを十分に考慮して運用の判断を行うことが重要です。

不動産投資におけるリスク

不動産投資にはどのようなリスクが潜んでいるでしょうか?大きく分けて3つのリスクが不動産取引には存在します。

それぞれリスクとなる理由を考えてみましょう。

1.収入、支出に関するリスク

  • 予定していた賃料収入が得られていない。
  • 賃料の滞納がある。
  • 空室になってしまった。
  • 修繕コスト、管理コストが発生する。
  • 融資に対する支払が発生する。

2.投資元本と流動性に関するリスク

  • 購入価格以上で売却ができない。
  • すぐに現金化できない

3.社会的、経済的要因に関するリスク

  • 不動産関連の法制度が変わる。
  • 不動産関連の税制が変わる。

 

考えれば詳細に様々なリスクが浮き上がってきます。リスクの具体的な内容や、対処法・軽減方法については別途ご紹介したいと思いますが、不動産投資においても多くのリスクが伴うことは忘れてはいけません。

不動産投資におけるリターン

不動産投資におけるリスクに対してリターンはどれくらい期待できるのでしょうか?インカムゲインにあたる賃料収入において「利回り」という言葉があります。不動産投資における「利回り」とは、「投資金額に対する1年間の収入の割合」を示しており、「%(ぱーせんと)」で表します。

利回り(%) = 不動産から発生する収入(賃料収入)÷ 投資金額(購入金額)× 100

例えば500万円のワンルームマンションを購入し、家賃がひと月4万円とすると年間で48万円が賃料収入となるので、上の数式にあてはめるとこの不動産の利回りは9.6%となります。

ただし、不動産投資にも様々なリスクが伴いますのでこの利回りは確定されているものでなく、あくまでも予定に過ぎないということを認識しておかなければなりません。また、不動産投資には購入費用のほかに様々な諸経費が購入時から運用中も発生するため、予定利回りと実際に手元に残る金額の利回りには差が生じます。

表面利回り(予定利回り)と実質利回りが存在し、大きく異なる場合があるので注意が必要です。

不動産投資は儲かるの?

正直言って努力次第です。前述したように様々なリスクがあり、それらのリスクは軽減することも回避することも自身の努力次第ですし、投資効率のパフォーマンスを上げることも努力次第で可能となります。投資した事業に自分の意思が反映され、努力次第で結果を向上できるのも不動産投資の魅力の一つといえます。すべてを人任せにすることなく、自分自身でも不動産に関する知識を学び生かすことが非常に重要です。

不動産投資の魅力

不動産投資の魅力

不動産投資は他の投資商品と比較して、どのような魅力があるのでしょうか?

毎月の安定的な収益

不動産投資の一番の魅力は毎月安定的な収益を得られることが可能であるという点です。他の投資商品の中でも毎月分配金を受け取ることができる投資商品は数少なく、株式投資の配当金は多くて半年に一度、もしくは1年に一度です。投資した会社の業績が思わしくない場合、配当金が出ないこともあり得ます。

不動産投資の場合には入居者さえ確保できれば、その入居者が退去するまでの間、入居者がいる限りは毎月、安定した収益が見込めます。老後の生活では、この収益が年金を補ってくれるので、不動産投資の魅力のひとつとなります。

状況によっては売却益を狙うことも可能

安定的収益が不動産投資の魅力のひとつですが、投資した物件によっては売却による利益が得られる可能性もあります。

バブル期には不動産の活発な売買により地価が上昇していましたが、再度、日本経済が成長・発展することで、地価が上昇し、売却益が得られることがあるかもしれません。現状では、その不動産から得られる収益をベースに不動産の価格が決められていることもあり、収益をアップさせる努力や工夫をすることで不動産の価値が上がれば、売却益を得る可能性も出てきます。

資金調達が可能

不動産には担保力があり、その不動産を担保にすることで金融機関から融資を受けることが可能です。不動産投資の場合、資産があまりない場合でも、取得する不動産とその不動産から得られる収益を担保にして融資を受けることが可能になります。

取得した不動産物件を担保に融資を受けた場合、毎月の家賃収入を返済に充てることができます。融資金額や借入金利、取得不動産の利回り等の条件によりますが、毎月の返済額と家賃収入の差額が手元に残る場合があります。

マイホームの住宅ローンでは、住宅からの収益が得られないので毎月の給料などの収入から返済していかなければなりません。不動産投資で融資を受けた場合、その不動産から得られる収益が毎月の返済額(全部または一部)を賄うことが可能になるため、担保力や収益力のある不動産物件を購入する場合、年間所得の低く人でも融資を受けることが可能な場合があります。これも不動産投資の魅力のひとつになります。

税制上のメリットを受けられる

不動産投資では家賃収入に対する税金(所得税)と不動産を所有している人が亡くなった時に課せられる相続税について、ほかの投資商品とは課税の扱いが違い、優遇措置を受けられる場合があります。

1.所得税での優遇措置

不動産から得られる家賃収入は不動産所得となり、所得税の対象となります。家賃収入から実際にかかった経費(固定資産税・都市計画税・管理費・修繕費・借入金の金利など)に加え、建物の減価償却費も引くことができ、家賃収入から経費・減価償却費を引いた分が税務申告上の所得額となります。

減価償却費は税務上、支払いを伴わない経費として認められているため、税務申告上の所得額より手元に残る実際の金額(キャッシュフロー)が減価償却費の分は良くなります

給与所得がある場合、不動産所得は総合課税の対象となるため、合算して課税されます。

2.相続税での優遇措置

相続税は遺産課税とも言われ、財産を残して亡くなった場合に相続人(財産を引き継いだ人)が、その相続した額に対して課税され納める税金です。

相続する財産を評価する場合、現金や有価証券などは亡くなった時の時価で評価されます。不動産の場合、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価額で計算し、さらに人に貸している場合にはそこから一定額を引くことが可能になります。

すなわち、収益物件である不動産の場合、評価額がさらに低くなり、現金や有価証券を保有しているよりも不動産を保有している方が評価の引き下げ幅が多くなり、相続税を軽減することが可能になります。

賃貸事業として自分自身が関与できる

株式投資などと違って、不動産投資は投資した不動産による賃貸事業を自分自身が大きく関与できることも魅力のひとつといえます。

不動産投資をはじめようと考えてから、物件の選定、取得、賃貸事業経営、物件の売却までのすべてが、自分判断で行うことになります。当然それぞれの状況において不動産会社や融資を受ける金融機関など、プロからアドバイスを受けることになりますが、そのアドバイザーを選ぶことも自分で決めることができます。そういう点からみれば不動産の知識を習得するにつれ優秀なアドバイザーを見つけることも可能になり、不動産投資における成功に近づいたと言えるでしょう。

物件購入に際して、価格交渉することで少しでも安く物件を取得することが可能になる場合もあります。賃貸事業を始めてから物件の管理運営も、現状の管理会社よりお値打ちで質の良いサービスを提供してくれる管理会社があれば、積極的に管理会社を変更することで管理コストを下げ、限られた家賃で収益部分を増やすこともすべて自分の判断で可能になります。

不動産投資では自分自身が積極的に事業にかかわることで収益を増やしていくことも不可能ではありません。

不動産投資の魅力

不動産投資には他の投資商品にはない魅力的なメリットがあり、資金調達も容易にできることから、会社員を続けながら不動産投資を始めることも可能になります。不動産投資は不動産の特性や、リスクとリターンを把握できれば魅力的な投資商品となります。