REITとは
REIT(リート)とは、Real Estate Investment Trustの略で、日本語にすると不動産投資信託となり、その名前のとおり、不動産に投資する投資信託です。
投資家から資金を集めて、不動産を運用して得た賃料収入等を元に投資家に分配する金融商品になり、投資家は間接的に不動産に投資をしていることになります。
米国で1960年代に誕生し、1990年代に急速に拡大、日本では、2000年11月「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正により、2001年9月に市場が創設されました。仕組みがアメリカのREITと異なる点もあるため、J-REIT(ジェイ・リート)と言われています。(以降、J-REITをREITと称します。)
REITの投資口は証券市場に上場しており、証券会社を通して日々の価格(投資口価格)で売買されています。投資信託と名前が付いていますが、上場株式と同様に取引する金融商品になります。投資家は株式会社の株主と同様に投資主総会に参加することができます。
株式との用語比較
REITの仕組み
REITの場合は、不動産投資法人という特別な法人を作ることで不動産への投資・運用等を行っています。
投資家から集めた資金や金融機関から借りたお金でオフィスビルなど複数の不動産を購入し、テナントに貸し出します。不動産投資法人はテナントから得られる賃料などから、管理手数料などを差し引いた金額を分配金として投資家に支払います。投資家はREITを通して間接的に不動産に投資する形になります。
不動産投資法人によって運用する不動産の種類(用途)が異なり、一つの用途に特化している投資法人や、複数の用途に分散する投資法人などがあります。
※上記は一般的な上場REITのイメージであり、実際のしくみ(運用)が必ずしも上記の通りになるとは限りません。
REITの運用の仕組み
不動産投資法人という投資法人は不動産を運用することだけを目的として創られた器のようなものです。法律によって直接運用などの実際の業務を行うことが禁止されており、運営を全て外部に委託しています。この委託先の中で重要な役割を果たすのが資産運用会社です。資産運用会社は、不動産の選定や日々の管理、資金調達等、実質的に不動産投資法人が必要とするほとんどの業務を行っています。
不動産投資法人の業務委託先
資産運用会社(投資信託会社)
購入する不動産の選定、金融機関からの資金借り入れ交渉、不動産の運営方針の決定を行い、不動産の価値を維持するために長期修繕計画などを立案し実行します。
さらに、テナント募集や不動産の管理・メンテナンスなどの業務は資産運用会社が専門業者を選定し、業務を委託します。
資産委託会社
REITが保有している資産の保管を行います。通常、信託銀行が資産保管会社となっています。
専門業者
資産運用会社の指示のもと、テナント募集や不動産の管理・メンテナンスなどの業務を行います。
※上記は一般的な上場REITのイメージであり、実際のしくみ(運用)が必ずしも上記の通りになるとは限りません。
不動産投資法人は原則として不動産の開発は行わず賃貸事業に特化している点から、一般の不動産会社に比べて収益が安定しています。
REITの魅力
REITには不動産投資信託という名前から金融商品としての魅力と、不動産投資としての魅力という2つの魅力が想像できます。では、それぞれの魅力を見てみましょう。
金融商品としての魅力
高く安定した分配金(インカムゲイン)
REITは年2回あるいは1回決算を行い、投資家に分配金を支払います。通常の株式会社であれば利益に対して法人税がかかりますが、REITは制度上、利益の90%超を分配すればなど一定の基準を満たせば、法人税が課税されない仕組みがあります。そのため、投資家は不動産に直接投資するのと同様に、不動産からの収益のほとんどを決算期ごとに分配金として受け取ることができ、株式と比べて高い分配金を得ることができます。
また、長期に安定した賃料を生む不動産を投資対象としているため、分配金が安定しており、インカムゲインとしての特徴を持つ金融商品です。
少額で不動産投資
不動産に直接投資するには、少なくとも数千万円以上の多額の資金が必要になるため、個人で不動産投資を検討しても、資金面がネックになります。これに対してREITは不動産を証券化しているため、1万円から100万円程度の少額で投資できます。
分散投資
個人が現物の不動産投資で分散投資を行うとしても投資金額が多額になるため困難です。また不動産を1棟だけ購入しても、空室が発生した場合、収益を生まないだけでなく管理費等の経費が掛かるため、収益はマイナスとなります。
一方、REITは複数の不動産に投資しており、現物不動産への投資と比較してテナント数も多いので、空室による賃貸収益全体が大きく減ることがないなど、格段にリスクが分散されています。また投資法人によっては、投資対象資産の用途や地域が多岐にわたります。したがって、REITは、少額での投資でも用途・テナント・地域の分散も可能になります。
換金性が高い
現物の不動産は売りたいときにすぐ売却できるとは言えません。また、売却する際、不動産仲介会社を選び、売却金額を自分で判断し、様々な書類を揃えるといった手間の掛かる作業が必要となります。
一方、REITは証券市場に上場しているため、投資口を市場価格で取引できるので、現物不動産の売却のような手間をかけずに換金できます。
しかも、REITの価格は毎日変動しているため、タイミングによって、購入時の価格より高く売ることができれば、その差額が利益となります。
プロの運用、透明性が高い
現物の不動産投資には、購入した物件のテナントや建物管理など素人には煩わしい面倒な業務がたくさんあり、管理やメンテナンスを専門業者に任せるにしても、業者がちゃんと管理しているかどうかは自分自身でチェックしなければなりません。さらにテナントが退去するなど空室が増えれば賃料は減り、不動産の維持が難しくなります。
一方、REITは不動産の売買や運営を不動産投資の経験豊富なプロが行っています。運用以外の業務(物件の管理やメンテナンスなど)を行う業者の選択や監督も行うので投資家が不動産に直接投資するような費用や手間がかかりません。
また、運用不動産の稼働状況や収支状況を定期的に開示しているので、投資家は投資法人が運用する不動産の状況を知ることができます。
不動産投資としての魅力
インフレ対策になる
不動産投資はインフレ対策になるともいわれています。インフレというのは「継続的に物価が上昇すること」です。物価が上がると手持ちの現金や預貯金の勝ちは目減りしてしまいます。
一方、インフレになると不動産の資産価値や不動産賃料も上がる傾向にあります。それに伴ってREITの価値や分配金も上昇すると考えられています。
このようにREITを運用すれば、不動産に直接投資するよりも少ない金額で不動産に投資できるだけでなく、インフレへの備えが可能となる金融商品と言えます。ただし、銘柄によって投資対象とする用途や物件売却方針が異なるため、賃料の上昇及び下落の度合いは異なります。
また、一般的に不動産の価格は株価などに比べると変動が小さく、比較的安定していることから、REITは「ミドルリスク・ミドルリターン」の金融商品といわれています。
REITは、魅力がある一方でさまざまなリスクがあり、元本・利回りが保証された商品ではありません。上場時や増資時に発行される目論見書、決算毎に開示される報告書等には、その他リスクが詳細にわたって記載されています。投資する際にはそれらをよく読み、リスクを確認することが重要です。
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