不動産小口化商品とは
初心者でも少額の資金で参加できる不動産投資として不動産小口化商品が注目されています。
特にインターネットの普及に伴う手軽さで、多くの人の関心を集める不動産小口化商品について、関連性の高いクラウドファンディングや不動産特定共同事業(法)にも触れながら解説します。
不動産小口化商品とは
不動産投資を行うには、本来持たれているイメージ通り数千万円から数億円単位の多額の資金が必要になるのが一般的で、不動産会社や金融機関だけでなく入居者への対応など、手間のかかる手続きが伴うものでした。
近年は、投資単位が1口あたり100万円、場合によっては10万円という手頃な資金で、共同所有者もしくは匿名組合員として参加できるようになってきています。
こうした不動産の小口化の背景には、いわゆるクラウドファンディングによる投資方法の一つとして注目を集めたことにあります。この方法では資金を投資するだけで、不動産の運営も営業者に一任することができ、その点においては手軽に不動産投資ができる仕組みと考えられたからです。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」という単語を組み合わせた造語です。製品開発やサービスの立ち上げなどの目的を実現するために、インターネットを介して不特定多数の人や組織に対して、出資をはじめとする協力を依頼することをいいます。ソーシャルレンディングとも呼ばれ、幅広い分野での資金集めの方法として活用されています。
クラウドファンディングの種類には「投資型クラウドファンディング」という、金銭的な見返りを伴う方法や、「購入型クラウドファンディング」という、サービスを受ける権利や商品を購入することで支援する形態をとる方法、「寄付型クラウドファンディング」といって、見返りを期待しない応援型の方法などに分けられ、少額の資金で参加できるのが大きな特徴になります。不動産の小口化の場合は、利益および最初に決めた利息に基づき配当が行われるため、「投資型クラウドファンディング」に当てはまります。
不動産特定共同事業法の内容
不動産特定共同事業法とは、1995年4月に施行された法律です。以前、一律の規制がない状態で、多くの不動産事業者が不動産特定共同事業を実行し、平成バブル崩壊による資産価値の急落によって、投資家に甚大な被害が発生しました。このことを受けて、不動産の小口化商品の売買において投資家を保護し、小口化投資商品市場を健全に発展させる目的で作られたものです。
小口と言っても、かつての不動産小口化商品は1億円を超える商品が多かったのですが、この法律が制定されたことで、不動産小口化投資の最低出資額が撤廃され、1口100万円前後から投資できるようになりました。
近年は、クラウドファンディングの発展で、前述の通り、1口10万円前後から不動産小口化商品に投資することが可能になり、平成29年12月には小規模不動産特定共同事業も創設され、不動産の小口化商品は広がりを見せています。
不動産小口化商品の分類
不動産小口化商品は「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸借型」の3種類に大別できます。誰が主体となって不動産投資をするかによって異なるため、その主な特徴を解説します。
「匿名組合型」の主な特徴
投資家が出資したお金を事業者が集め、組合はそのお金で不動産を購入、管理、運営します。事業者は投資家と匿名契約を結び、出資分に応じて収益を分配金として支払います。
- 投資家は組合に対して出資するため、不動産の所有権がない。登記上、不動産特定共同事業者が所有者として登記される。
- 投資家の名前が登記簿に上がらず匿名となります。
- 分配金は不動産所得でなく、雑所得となります。
「任意組合型」の主な特徴
投資家は出資分に応じて物件の共有持分権を保有し、その権利を持つ出資者の1人である事業者が組合を代表して不動産経営を行います。事業者は投資家と任意組合契約を結び、事業者から投資家に対して分配金を支払います。
- 投資家と事業者間で任意組合契約を締結、投資家が出資して共同事業を運営。
- 投資家は共有持分を購入し、これを組合に現物で出資。
- 不動産の所有権は投資家にある。登記もされるため、登記費用も必要。
- 分配金は不動産所得になる。
「賃貸型」の主な特徴
投資家は出資分に応じて物件の共有持分権を保有し、その権利を物件管理する事業者に貸し出し、事業者は賃料を投資家に支払います。
- 投資家が、不動産の共有持分権を事業者に委任、不動産賃貸事業から得た収益を投資家に分配。
- 分配金は不動産所得になる。
- 登記に所有者全員分の名義を記載する。
- 万が一、事業者が倒産しても投資家には債権者としての権利が残る。
不動産小口化商品の魅力
不動産の小口化商品は、少額で投資ができるという点が大きな魅力のひとつになります。さまざまな物件や異なる事業者の商品に同時に投資できるので、リスクを分散させるという点では大きな効果も狙える可能性もある商品と言えるでしょう。
今後の発展の余地がある不動産小口化商品
不動産小口化商品について、クラウドファンディングや不動産特定共同事業法とともに解説してみました。他の不動産商品に比べて流動性に欠けるなどデメリットはありますが、小規模不動産特定共同事業の創設もあり、不動産投資全体から見れば、今後まだ発展する余地を残していると言えます。
特に少額から不動産投資が行えることは大きなメリットになり、インターネットでの情報収集、集客、決済が今後ますます広がっていくことが予想される現在、不動産小口化商品も、それに伴って大きく発展する可能性は高いと思われます。